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ぼうぜの姿寿司

(すがたずし)

徳島名産「ぼうぜ」と「すだち」をまるごと味わう

ぼうぜの姿寿司は、徳島県に古くから伝わる郷土料理で、特に秋祭りの時期に欠かせないごちそうとして親しまれています。「ぼうぜ」とは、徳島の方言で「イボダイ(疣鯛)」を指す言葉で、地域によっては「エボダイ」「ウボゼ」「シズ」とも呼ばれています。

この料理は、酢でしめたぼうぜの魚体をそのまま使い、腹の中にすだちを加えた香り高い酢飯を詰めて、魚の形を保ったまま仕上げることから「姿寿司」と呼ばれています。魚を丸ごと使うため、見た目にも豪華で、お祝いの席にもぴったりの一品です。

旬のぼうぜと徳島の風土

ぼうぜの漁期は、夏の終わりから秋にかけてで、ちょうど徳島各地で秋祭りが行われる時期と重なります。新鮮なぼうぜが豊富に手に入る徳島では、この魚を活かした姿寿司が季節の風物詩となってきました。

近年ではぼうぜの漁獲量が減少傾向にあるため、アユやアジ、サバ、サンマなどを代用して作られることもありますが、地元の人々にとってはやはり「ぼうぜ」で作ったものが特別な味わいです。地域のスーパーなどでも秋になると姿寿司が並び、家庭の味としても広く親しまれています。

徳島の祭りと姿寿司の関係

秋祭りの時期になると、徳島県内の各地ではこの「姿寿司」が家庭や集会の席でふるまわれるようになります。姿寿司は、赤飯やかきまぜ寿司(ちらし寿司)、お吸い物、甘酒などと一緒に並ぶ定番の祭り料理で、家族や親戚が集まる場をにぎやかに彩ります。

また、魚の形をそのまま残した「姿寿司」だけでなく、ぼうぜの切り身を塩や酢に漬け、すし飯とともに握った「ぼうぜのにぎり」などのバリエーションもあり、それぞれが異なる食感や味わいを楽しませてくれます。

ぼうぜの姿寿司の作り方

主な使用食材

ぼうぜ(イボダイ)、すだち、酢飯、ゆずなど

丁寧な下処理が美味しさの鍵

まず、ぼうぜは背開きにし、内臓や骨、えら、目玉、血合いなどを丁寧に取り除きます。その後、全体に塩を振って30分~1時間ほどおき、余分な水分と臭みを抜きます。

酢でしめる工程

下処理を終えたぼうぜは、さらに酢に漬けて約1時間。これにより身が柔らかくなり、骨まで食べやすくなるのが特徴です。特に7時間以上酢に漬けた場合は、頭まで食べることができるほど柔らかくなると言われています。

香り豊かな酢飯と仕上げ

酢飯には、徳島特産のすだちやゆずなどの柑橘を加えることで、さわやかな香りと味わいが引き立ちます。すし飯をぼうぜの大きさに合わせて握り、その上から酢でしめたぼうぜの身をかぶせ、押し寿司として形を整えます。

仕上げには、寿司を押し型に入れて一晩以上重しをかけることで、味がなじみ、より美味しくなります。手間はかかりますが、その分食べたときの満足感は格別です。

地域に根ざす伝統の味

ぼうぜの姿寿司は、徳島県全域で伝承されており、特に県南部においては古くから祭りのごちそうとして大切にされてきました。魚をまるごと使った姿寿司は、自然とともに生きてきた徳島の人々の暮らしと、季節の移ろいを感じさせる料理です。

現代においても、その伝統はしっかりと受け継がれており、家庭の味として、また郷土の誇りとして、多くの人に愛されています。徳島を訪れる機会があれば、ぜひ地元で味わう「ぼうぜの姿寿司」を楽しんでみてください。

Information

名称
ぼうぜの姿寿司
(すがたずし)

阿南・日和佐(美波)

徳島県