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松坂隧道

(まつさか ずいどう)

日本最古の現場打ちコンクリート造りトンネル

松坂隧道は、徳島県海部郡牟岐町大字内妻に位置する、国内最古の現場打ちコンクリートを用いたトンネルです。このトンネルは、その建設手法により、日本の土木技術史において重要な位置を占めています。周囲の歴史的な景観や、その建設当時の技術的な挑戦により、松坂隧道は観光地としても訪れる価値のある場所となっています。

歴史的背景

松坂隧道は、牟岐町から浅川へ至る工事区間に位置し、大正時代に着工されました。工事は大正3年に開始され、大正11年4月までの約8年間にわたり続きました。トンネルの総工費は293,716円であり、その中でも松坂隧道の工事は特に難航したと伝えられています。このトンネルの完成は、大正9年に起工し、大正10年に竣工しました。工事費は全体の3分の1以上、約11万円を費やしたほど、当時としては大規模な工事でした。

トンネルの特徴

松坂隧道の延長は87メートル、幅員は約6メートル、高さ5メートルで、当時の土木技術としては非常に大きなトンネルでした。さらに、東西の入口には、大津知事の筆による「松坂隧道」および「道通天地」という銘が刻まれています。これらの銘は、トンネルを通じて人々や物資の移動が促進され、地域の発展に貢献したことを象徴しています。

松坂隧道の建設と技術的な意義

松坂隧道は、現場でコンクリートを打ち込む「現場打ちコンクリート」技術を採用した日本初のトンネルです。この技術は、当時のトンネル建設では革新的なものであり、特に困難な地形に適応するための新しいアプローチでした。大正時代の工法として、アーチ部分に三心円アーチを採用し、坑門や一部の覆工をモルタル仕上げにすることで、構造の強度と美しさを両立させています。

建設の困難さ

松坂隧道の建設は、当時の技術水準を大きく超えた難工事でした。大正9年に起工したこの工事では、地質や海岸近くの厳しい気候条件を克服するために、最先端の土木技術が必要とされました。工事費が全体の3分の1以上に及ぶほどの難度があり、完成までの道のりは決して平坦なものではありませんでしたが、その結果として日本のトンネル技術の発展に大きな貢献を果たしました。

観光としての松坂隧道

現在、松坂隧道は観光スポットとしても多くの人々に訪れられています。四国東南部の海岸線に沿った旧幹線道路に位置し、内妻海岸から旧国道55号線に沿って「内妻あじさいロード」を進むと、その歴史的なトンネルへと辿り着きます。周囲の自然豊かな環境の中で、隧道は時代を超えて佇み、その存在感は訪れる人々を魅了しています。

アクセスと見どころ

松坂隧道へは、内妻海岸から約1キロメートル進んだ旧国道55号(町道内妻あじさいロード)を通って訪れることができます。隧道の全長は87メートル、幅員5.8メートルで、真っ直ぐに伸びる直線トンネルの造りは、その当時の土木技術を感じさせます。内部はコンクリートで覆われており、アーチ形のデザインが印象的です。特にトンネルの坑門部分には、モルタル仕上げが施されており、歴史的な建築美が楽しめます。

周辺観光スポット

松坂隧道周辺には、自然豊かな内妻海岸をはじめ、観光名所が点在しています。隧道を訪れた後には、内妻海岸の美しい景色を眺めたり、旧国道沿いを散策することで、地域の歴史と自然を満喫することができます。また、季節によっては「あじさいロード」の名の通り、道沿いに咲く美しい紫陽花を楽しむこともできます。

観光のおすすめポイント

松坂隧道は、その歴史的な価値だけでなく、周囲の自然環境との調和も魅力の一つです。トンネル内を歩くだけでなく、周辺の風景や、旧国道55号線沿いの静かな道を散策することで、地域の魅力を存分に堪能できます。また、地元の歴史に興味がある方にとっては、大津知事の筆による銘を見ることで、当時の歴史的背景や地域の発展に思いを馳せることができるでしょう。

まとめ

松坂隧道は、日本最古の現場打ちコンクリート造りのトンネルとして、その技術的な重要性と歴史的価値を持っています。大正時代に完成したこのトンネルは、土木技術の発展に寄与し、現在も訪れる人々にその魅力を伝えています。周囲の自然豊かな環境と相まって、観光スポットとしてもおすすめの場所です。徳島県を訪れた際には、ぜひ松坂隧道に立ち寄り、その歴史的な雰囲気を感じてみてください。

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名称
松坂隧道
(まつさか ずいどう)

阿南・日和佐(美波)

徳島県