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薬王寺

(やくおうじ)

薬王寺は、徳島県海部郡美波町に位置する高野山真言宗の寺院です。医王山(いおうざん)、無量寿院(むりょうじゅいん)と号し、本尊には薬師如来が祀られています。薬王寺は四国八十八箇所の第二十三番札所として知られ、特に厄除けの寺としての名声を持ちます。

本尊の真言とご詠歌

本尊真言: おん ころころ せんだり まとうぎ そわか
ご詠歌: 皆人の病みぬる年の薬王寺 瑠璃(るり)の薬をあたえましませ

歴史

寺の創建は神亀3年(726年)にさかのぼり、聖武天皇の勅願により行基が開基したと伝えられています。その後、弘仁6年(815年)には空海(弘法大師)が平城上皇の勅命を受け、厄除けのために薬師如来像を刻み、伽藍を建立しました。

文治4年(1188年)、薬王寺は火災により堂塔を焼失しましたが、本尊は玉厨子山の奥之院に飛び、自ら焼失を逃れたという伝説が残っています。その後、後醍醐天皇の命によって堂塔が再建され、新たな本尊が彫られましたが、元の本尊も飛び帰り、後ろ向きに厨子に入り自ら厨子を閉じたとされています。このため、薬王寺には「後向き薬師」と称される二体の本尊が存在しています。

再建と歴代の信仰

後醍醐天皇によって堂塔は再建され、以降も天皇や徳島藩主蜂須賀家などからの篤い信仰を受けてきました。特に、天皇からの勅使が派遣されるほど、薬王寺は厄除け祈願の場として重要視されていました。現在の本堂は明治41年(1908年)に再建されたものです。

境内とその見どころ

山門(仁王門)

山門は天保6年(1835年)に建立されました。厄除けの寺として知られる薬王寺は、この山門を通ると厄を祓うといわれています。

厄坂

薬王寺には厄坂として有名な階段があり、女坂は33段、男坂は42段、還暦厄坂は60段とそれぞれの年齢や厄に応じた階段を上ります。この階段を登ることで厄除けができるとされています。

本堂と奥殿

薬王寺の本堂は明治41年(1908年)に再建されたものです。奥殿は二重塔になっており、拝殿と共に厳かな雰囲気を醸し出しています。参拝者は申し込めば堂内での参拝も可能です。

肺大師

本堂の裏には「肺大師」と呼ばれる祠があり、ラジウムを含む瑠璃の水が湧き出ています。この水は肺病などに効能があると伝わり、祠には大師石像が祀られています。

白山権現の鎮守社

薬王寺の境内には、白山権現を祀る鎮守堂や地蔵堂、十王堂があり、それぞれに厄除けや開運の祈願が行われています。また、境内には厄除消除の鐘があり、参拝者は大随求真言「オン バラバラ・サンバラ サンバラ・インジリヤ・ビシュダニ ウンウン・ロロシャレイ ソワカ」を唱えながら、歳の数だけ鐘を鳴らして厄を祓います。

その他の境内施設

瑜祇塔

昭和38年(1963年)に建立された瑜祇塔は、宝塔形の美しい建物です。階下には戒壇めぐりがあり、薬師三尊が祀られています。また、1階には五智如来が祀られ、美しい魚籃観音が展示されています。2階は展望台となっており、有料で見学が可能です。

文学碑・句碑

境内には、松村ひさきの句碑「露けしと誰かが先にあるきだす」が大師堂の右前にあります。また、本堂の左前には、著名な作家吉川英治の文学碑も建てられています。

寺宝と文化財

薬王寺には貴重な文化財が数多く保存されています。中でも、美波町指定有形文化財として「薬王寺の真言八祖像」や「薬王寺の星曼荼羅(九曜星)」、そして「薬王寺の仁王門の仁王像」が知られています。

真言八祖像

薬王寺の真言八祖像は、2015年に美波町指定有形文化財として指定されました。この像は、弘法大師や恵果などの肖像彫刻で、全9体が大師堂に安置されています。これらの像は、天文19年(1550年)に作られた弘法大師像と、安永3年(1774年)に京都の仏師・塩釜浄而によって作られた他8体の像です。

星曼荼羅(九曜星)

室町時代に制作された星曼荼羅は、星座を用いた修法に使用され、九曜を描いたものです。曼荼羅には、土曜星、日曜星、月曜星、計都星、羅喉星などが描かれており、厄除けのために信仰されています。

仁王門の仁王像

仁王門には、1836年に仏師・塩釜高運と康信が作った仁王像が安置されています。これらの像は、高さ230cmの大きなもので、2000年に修復が行われています。

境内の自然と見どころ

大楠

薬王寺の境内には、町指定天然記念物の大楠が2本立っています。樹齢数百年とされるこれらの大楠は、圧倒的な存在感を放ち、参拝者を見守り続けています。

奥の院 玉厨子山 泰仙寺

薬王寺の奥の院である玉厨子山 泰仙寺(たまずしざん たいせんじ)は、標高540mの中腹に位置し、本尊には如意輪観世音菩薩が祀られています。伝承によれば、薬王寺が焼失した際、本尊の薬師如来が飛び出し、この地に留まり輝いたとされています。奥の院までの道のりは険しく、駐車場から寺まで徒歩約40分の距離がありますが、その神聖な雰囲気と景観は訪れる価値があります。

周辺の番外霊場

小松大師

薬王寺の近くに位置する小松大師は、大阪難波の石工が大師像を阿波の小松に送る夢を見たことから建立されたと伝えられています。現在も多くの巡礼者が訪れる霊場です。

草鞋大師

草鞋大師は八坂トンネル近くに位置し、難所であるこの地を無事に通過できるようにと祈願されています。2010年に新たに造られた大師像が祀られています。

鯖大師本坊

四国別格二十霊場の第四番札所である鯖大師本坊は、鯖大師伝説に基づく寺院で、四国の霊場巡りの一部として多くの参拝者に親しまれています。

浪切不動尊

浪切不動尊は、海部川の支流に位置する苔むした境内を持つ霊場です。ここでは、弘法大師が不動尊を祀り、悪人は通ることができないとされる二本の杉の木が参拝者を見守っています。

交通案内

鉄道

四国旅客鉄道(JR四国)牟岐線の日和佐駅から徒歩約10分の距離にあります。

バス

徳島市から徳島バスの阿南方面行きに乗車し、日和佐バス停で下車後、徒歩約10分です。

徳島自動車道の徳島インターチェンジから車で約90分の距離にあり、駐車場も完備されています。

Information

名称
薬王寺
(やくおうじ)

阿南・日和佐(美波)

徳島県