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白水山 平等寺

(はくすいざん びょうどうじ)

平等寺は、徳島県阿南市新野町に位置する高野山真言宗の寺院で、白水山、医王院(いおういん)と号します。本尊は薬師如来であり、四国八十八箇所霊場の第二十二番札所として知られています。また、阿南室戸歴史文化道に指定され、四国八十八景18番「涅槃大師に見える風景」として選定されています。

寺院の概要

平等寺の所在地は徳島県阿南市新野町で、周辺には歴史的な風景と文化が点在しています。四国八十八箇所霊場の一部として、阿南室戸歴史文化道にも指定され、多くの巡礼者や観光客に親しまれています。寺名の由来には、空海がこの地で厄除け祈願を行った際、五色の雲がわき金剛界大日如来の梵字が現れ、その奇跡を機に薬師如来を刻んで本尊としたことが起源とされています。

本尊と結縁の綱

平等寺では、本尊の薬師如来から伸びる結縁の綱を通じて参拝者と仏がつながるとされています。また、本堂から遠くを見渡すと、涅槃大師(弘法大師)が寝ている姿に見える風景が特徴的です。

本尊と真言

本尊真言:

おん ころころ せんだり まとうぎ そわか

平等寺のご詠歌

平等寺に伝わるご詠歌は、次の歌詞によって表現されています。

ご詠歌:

平等にへだてのなきと聞く時は あら頼もしき仏とぞみる

歴史

創建と由来

平等寺の創建に関しては、寺伝によれば弘法大師空海がこの地で厄除け祈願を行った際、五色の雲が湧きあがり、金剛界大日如来の梵字が金色に現れたと伝えられています。さらにその場所で加持を行うと、薬師如来像が浮かび上がり、空海はその場に錫杖で井戸を掘ると乳白色の水が湧き出したとされています。この水で身を清めた空海は百日間修行し、薬師如来像を刻んで堂を建て、その像を本尊として安置したことが平等寺の始まりとされています。

寺の名前である「平等寺」は、この霊水によって人々の平等な幸せを祈り、一切の衆生を平等に救済するという空海の願いが込められています。

再建と護摩祈願

平等寺は、かつて七堂伽藍や12の末寺を持つ大寺院として栄えていましたが、天正年間(1573年~1592年)に長宗我部元親の兵火で焼失しました。享保年間(1716年~1736年)には照俊阿闍梨によって再興されました。2017年からは毎年「本尊初会式」が行われ、護摩祈願が捧げられています。

境内の見どころ

平等寺の境内には、多くの歴史的建造物や見どころが点在しています。それぞれに深い意味が込められており、参拝者はその美しさと信仰の力を感じることができます。

山門

平等寺の山門は、入母屋造の楼門で、金剛力士像(仁王像)が安置されています。威厳あるこの門をくぐると、寺の神聖な空間へと導かれるような感覚を味わうことができます。

本堂

本堂には、本尊である薬師瑠璃光王如来が祀られ、脇には日光・月光菩薩や十二神将が配されています。さらに、脇陣には青不動明王坐像や毘沙門天立像、倶利伽羅不動と金剛界大日如来坐像も見られます。内陣の天井絵には四国八十八箇所の本尊が描かれており、外陣の天井絵には多くの草花があしらわれているなど、芸術的な美しさも魅力です。

大師堂

大師堂では、弘法大師像を拝観することができます。また、脇陣には弘法大師の十大弟子像が祀られており、弘法大師との深い結びつきを感じさせます。

鎮守社(祠)

平等寺の境内には、愛宕大権現、清瀧大権現、天満大自在天神、祇園牛頭天王を祀る鎮守社(祠)があります。また、左脇には小さな祠があり、稲荷大明神が祀られています。訪れる人々は、それぞれの祠で願いを込めて参拝します。

護摩堂

護摩堂には、不動明王立像が祀られ、脇には金剛界大日如来の小像と稚児聖徳太子像が安置されています。さらに、脇陣には役行者と弘法大師が祀られ、前には赤不動明王坐像も見られます。護摩堂は修行や祈願の場として、参拝者に特別な祈りの空間を提供しています。

観音堂(小堂)

小さな観音堂も境内の一角にあり、参拝者は静かに祈りを捧げることができます。観音菩薩の慈悲に触れ、心が洗われるような体験をすることができます。

白水の井戸

平等寺には「弘法の霊水」とも「開運鏡の井戸」とも呼ばれる白水の井戸があります。この井戸の水は万病に効くとの言い伝えがあり、参拝者の間で非常に人気があります。

厄除け坂

本堂に向かう道中には、「厄除け坂」として知られる石段があります。男坂42段、女坂33段、子厄坂13段とあり、合計88段となっています。また、本堂の壇上から遠くを見渡すと、大師が寝ているかのような景色が広がり、その美しさは訪れる人々を魅了します。

鐘楼

山門を入ってすぐ左には鐘楼があり、参拝者はここで鐘を鳴らし、祈りを捧げることができます。鐘の音が響く中、静かな境内で心を落ち着けるひとときを過ごすことができます。

白水山 新四国八十八ヶ所

平等寺の裏山には「白水山 新四国八十八ヶ所」があり、一周約45分で巡ることができます。巡礼者にとっては、短い時間で四国八十八ヶ所の霊場を巡ることができる貴重な体験となっています。

句碑

境内には句碑も立っており、谷中隆子の句「大道といへる道あり花樗(おふち)」が女厄除坂の途中に、「・・の・を・して花ちりぬ」がその上に刻まれています。参拝の合間にこれらの句を楽しみながら、風流なひとときを過ごすことができます。

宿坊

平等寺には、参拝者が宿泊できる宿坊が3室あります。完全予約制となっており、静かな環境で心身を休めることができます。宿坊に泊まることで、より深い祈りの体験を得られることでしょう。

文化財

国史跡 - 阿波遍路道 平等寺道

太龍寺から平等寺に至る遍路道の一部、大根峠の前後601メートルが国の史跡に指定されています。この遍路道は、空海が実際に歩んだ道として、多くの巡礼者にとって特別な意味を持っています。

県指定有形文化財

平等寺には、狩野内膳筆による紙本金地著色秋草図が4面存在し、昭和44年に徳島県の有形文化財に指定されています。

アクセス

鉄道でのアクセス

JR新野駅から徒歩で2.3キロメートル(約28分)、車で2.9キロメートル(約5分)です。

バスでのアクセス

徳島バス阿南「新野局」停留所から徒歩550メートル(約2分)です。

車でのアクセス

遍路道は、21番札所太龍寺から平等寺まで約10.9キロメートルの距離があり、巡礼者が徒歩で巡る際のルートが整備されています。

奥の院と周辺の霊跡

平等寺周辺には、数々の霊跡や奥の院があります。それぞれが空海(弘法大師)の伝説にまつわる場所であり、深い信仰と歴史を感じさせます。

月夜御水庵

空海がこの地で宿泊した際、水不足に苦しむ人々を助けるため、加持して清水を湧かせたという伝説があります。夜になると空海は月を招き寄せ、月夜に変えたとされ、この場所には薬師如来を祀る庵が建立されました。

弥谷観音堂

弥谷観音堂は、かつて魔物が棲むといわれた谷間に、若き日の空海が足を踏み入れ、岩に如意輪観音を刻んで修行した霊跡です。この神聖な場所では、空海の修行の足跡を感じることができます。

阿部御水大師(あぶおみずだいし)

空海が水不足に苦しむ民衆のため祈願し、金色の龍が現れて水が湧き出したという霊跡が阿部御水大師です。この場所は「金龍庵」とも呼ばれ、当初は海に面して水が流れていたといわれていますが、崖崩れにより1954年に現在の場所に移されました。

鉦打大師・鉦打坂薬師

鉦打大師は、福井ダム建設により移転された石造大師像が祀られている場所です。ここには、享保4年(1717年)に灌頂された石造薬師像もあり、現在は多くの参拝者が訪れています。

平等寺とその周辺の霊跡を訪れることで、四国八十八箇所巡礼の一環としてだけでなく、歴史や信仰、自然との触れ合いを深く味わうことができます。阿南市を訪れる際は、ぜひこの寺院で心の安らぎを感じてみてください。

周辺の観光スポット

平等寺を訪れた際には、これらの周辺の観光スポットもぜひ訪れてみてください。

まとめ

徳島県阿南市に位置する平等寺は、四国八十八箇所霊場の一つとして多くの参拝者や観光客を迎え入れています。長い歴史とともに、伝統と現代の融合が感じられる場所です。厄除け坂や結縁の綱など、訪れる人々に深い信仰心と癒しを与えるこの寺院を訪れ、四国八十八箇所巡りの一環としてぜひ体感してみてください。

Information

名称
白水山 平等寺
(はくすいざん びょうどうじ)

阿南・日和佐(美波)

徳島県