長善寺は、徳島県三好郡東みよし町にある真言宗御室派の寺院です。寺号は中本寺であり、山号は駅路山、院号は三宝院といいます。本尊は虚空蔵菩薩であり、四国三十六不動霊場第8番札所、また阿波西国三十三観音霊場(西部)の第11番札所に指定されています。歴史的背景や見どころが豊富で、周辺地域との深い結びつきを感じることができる寺院です。
長善寺には次の御詠歌があります:
「やまかげを もれいてみゆる 長善寺 佛のちかい なおもたのもし」
長善寺は、弘法大師空海が開基したと伝えられています。当初は七堂伽藍を有していましたが、1586年(天正12年)に出火し、全てが灰塵に帰してしまいました。しかし、翌年には良玄僧正により再建され、その後も真言宗の中本寺として栄えました。
また、蜂須賀阿波守の祈願所として十石の録を賜り、1598年(慶長3年)には蜂須賀家政によって伊予街道の駅路寺に指定されました。現在の本堂は、1849年(嘉永2年)に再び火災で焼失しましたが、宥譲上人の手によって1860年に再建されています。
長善寺の本堂には、虚空蔵菩薩が本尊として祀られています。また、本堂の左端には護摩堂があり、四国不動霊場を巡礼する参拝者は、この護摩堂に向かって拝む習わしです。
本堂の上段には、商工農産の祈願所として知られる三宝山稲荷社があります。ここでは最上位稲荷が祀られ、地域の人々から信仰を集めています。
稲荷社のさらに上段には、不動奥之院があります。この場所は、柴燈護摩の広場としても利用されており、厳かな儀式が行われる場となっています。
寺院の入口には、鐘楼門と特徴的な赤い鳥居が設けられており、訪れる者を出迎えます。この鐘楼門は、長い歴史を経た寺院の象徴的な存在です。
長善寺の駐車場は、大型バスは国道192号脇に駐車できるスペースがあり、ワゴン車以下であれば本堂横まで進入が可能です。駐車場は無料で利用することができます。
長善寺は、鎌倉時代の貴重な仏教美術を所有しており、以下の2つの作品が重要文化財に指定されています:
これらの作品は、現在京都国立博物館に寄託されており、その価値が認められています。明治43年8月29日に重要文化財として指定されました。
長善寺は、さらに以下の文書が町有形文化財に指定されています:
この「駅路寺文書」は、1598年(慶長3年)に蜂須賀家政が藩内の主街道に沿った真言宗の8つの寺院を駅路寺に定めた際に発行されたもので、当時の「定書」が長善寺に宛てられたものです。この文書は、長善寺の歴史的な重要性を物語る貴重な遺物です。
長善寺へのアクセスは、JR四国の徳島線を利用するのが便利です。最寄り駅は「三加茂駅」で、駅からは徒歩で約100メートルの距離にあります。
長善寺の近くには、特別天然記念物に指定されている「加茂の大クス」があります。この大クスは、長い歴史を持つ巨大な木で、訪れる人々に自然の雄大さを感じさせてくれます。寺院からは約1kmの距離にあり、散策しながら立ち寄ることができます。
長善寺は、田岡一雄氏の菩提寺としても知られており、彼の家族の霊を供養するための寺院でもあります。彼の業績とその生涯を偲ぶために、訪れる参拝者も少なくありません。
長善寺は、徳島県東みよし町にある歴史と文化が深く息づく寺院です。開山以来、何度かの火災に見舞われながらも、多くの僧侶や信仰を寄せる人々によって復興され、現代に至るまでその威容を保っています。伽藍や文化財の数々、そして自然との調和が取れた静かな環境は、訪れる人々に心の安らぎを与えることでしょう。ぜひ、歴史的な寺院の魅力を体感しに足を運んでみてはいかがでしょうか。