脇町南町は、徳島県美馬市脇町大字脇町にある名勝で、歴史と文化が色濃く残る地域です。この地区は「うだつの町並み」とも呼ばれ、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。また、四国八十八景や都市景観100選など、数多くの賞や選定を受けています。
これらの選定は、脇町南町が歴史的、文化的な価値を持つ場所であることを示しています。うだつと白壁の美しい町並みは、多くの観光客を引き寄せています。
脇町南町は、徳島市から吉野川沿いに約40キロメートル上流に位置する、美馬市の山あいの地区です。この地域には、明治時代から江戸時代中期〜昭和時代初期にかけて建てられた85棟の伝統的な建造物が立ち並び、現在でもその風情を残しています。これらの建物の多くは「うだつ」と呼ばれる装飾的な構造を持っており、町の景観を特徴づけています。
「うだつ」とは、二階の外壁面から突き出した屋根の両端に設けられた漆喰塗りの防火用の袖壁のことです。これにより火事の延焼を防ぐ役割を果たしていましたが、同時に富裕層の家を象徴する装飾としても使われていました。脇町南町には約50個のうだつが存在し、その白壁と本瓦ぶきの屋根が、歴史的な町並みを形成しています。
うだつの町並みの建築様式は、本瓦ぶきの土蔵造りが主流であり、うだつのほかに、格子造り、蔀戸(しとみど)、虫籠窓(むしこまど)といった特徴的な建造要素も見られます。これらの建物群は、江戸時代から昭和時代初期にかけての日本の町並みを今に伝える貴重な遺産です。
脇町南町は、かつてこの地域の中心地として栄えました。1585年、徳島藩主となった蜂須賀家政が第一家老の稲田植元を脇城に配置し、産業振興を図ったことで、脇町南町は商業の中心地となりました。特に、阿波藍の生産が奨励され、藍商人たちによって富を蓄えたこの地域は、徳島県下では徳島、鳴門に次ぐ商業都市として栄えました。
江戸時代には藍の生産が盛んで、脇町南町は吉野川中流域の藍の集散地として繁栄しました。当時の商人たちは富豪となり、町には富裕層の家が並び、「うだつ」が家の格式を示す象徴として建てられました。これが脇町南町の町並みの特徴となり、今日に至るまで保存されています。
明治30年代以降、化学染料の普及により藍の生産は衰退しましたが、その後、養蚕業や製糸業が発展し、脇町南町は再び繁栄の時を迎えました。そして、1986年に「日本の道100選」に選定され、1988年には国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。これにより、町並みの保存活動が本格化し、現在でもその歴史的景観が保たれています。
脇町南町には、歴史を感じる建物や観光スポットが多く点在しています。観光客は、伝統的な建物を巡りながら、当時の生活や文化に触れることができます。
吉田家住宅は、1792年(寛政4年)に創業された藍商の家です。現在は美馬市指定文化財に指定されており、当時の藍商の暮らしを伝える施設として一般公開されています。藍商がいかにして富を築き、町の発展に貢献したかを知ることができる貴重な場所です。
小野五平生家は、脇町南町におけるもう一つの歴史的建造物です。町を代表する商人であった小野五平の生家として、その歴史的な価値が認められています。
これらの施設は、観光客にとって脇町南町をより深く理解し、楽しむための絶好のスポットです。
徳島自動車道を利用し、美馬市内にアクセスすることが可能です。道の駅藍ランドうだつもあり、車での観光に便利です。
JR四国 徳島線の穴吹駅が最寄り駅で、美馬市営バスを利用して町内にアクセスすることができます。また、周辺には旧長岡家住宅や最明寺といった歴史的な観光地もあり、徒歩での観光も楽しめます。
脇町南町は、徳島県の歴史と文化を感じることができる魅力的な観光地です。特に、うだつの町並みは日本の歴史的風景を残す重要な地域であり、多くの観光客に愛されています。美しい町並みを散策し、歴史を学びながらゆっくりと過ごす時間は、訪れる人々にとって忘れられない思い出となることでしょう。