脇町劇場 オデオン座は、徳島県美馬市脇町大字猪尻に位置する歴史的な劇場・映画館です。美馬市指定有形文化財に指定され、また「ヘリテージング100選」や「にし阿波お勧めビューポイント100選」にも選ばれています。その建築は四国における貴重な芝居小屋の一つとして、文化的価値を持っています。
脇町劇場は、1934年(昭和9年)に芝居小屋として開館しました。その後、戦後には歌謡ショーなど多彩な興行が行われ、多くの著名人が訪れました。1995年(平成7年)には映画館としての役目を終え、閉館と取り壊しが検討されましたが、映画『虹をつかむ男』のロケ地となったことが保存と活用のきっかけとなりました。1998年(平成10年)には美馬市指定有形文化財に指定され、1999年(平成11年)には修復工事が完了し、一般公開が開始されました。
脇町劇場の建設は、1933年(昭和8年)に地元の事業家である藤中富三や清水太平、そして森幸雄、吉川長次らの協力のもとで計画されました。吉川長次は劇場建設用に150坪の敷地を提供し、翌年の1934年に脇町劇場が開館しました。芝居小屋としての役割を果たしながら、戦後は著名な演者による歌謡ショーなどが開催され、多くの観客を魅了しました。
しかし、映画産業の衰退とともに劇場も老朽化し、1995年には閉館が決定しました。取り壊しの予定があったものの、1996年に山田洋次監督の映画『虹をつかむ男』のロケ地として使用され、映画内で「オデオン座」として登場しました。この映画がきっかけとなり、劇場の保存に向けた取り組みが本格化しました。1998年には市の文化財として指定され、1999年には修復が完了し、現在もその姿を保ち続けています。
劇場の名前「オデオン座」は、フランス・パリの国立劇場であるオデオン座に由来しています。この名は、映画『虹をつかむ男』の中で使用され、劇場の新たな象徴となりました。
脇町劇場は、木造2階建ての建築で、間口14.5m、奥行27.3mの広さを持っています。舞台には廻り舞台や奈落、花道、大夫座、うずら桟敷といった伝統的な設備が備わっており、芝居小屋としての特徴を色濃く残しています。
四国に現存する芝居小屋建築として、脇町劇場は貴重な存在です。他には愛媛県喜多郡内子町の内子座、香川県仲多度郡琴平町の旧金毘羅大芝居(金丸座)のみが残っており、三棟のうちの一つとしてその価値が認められています。
脇町劇場の近くには「脇町南町伝統的建造物群保存地区」があります。歴史的な町並みとともに、劇場の観覧と併せて訪れることができ、観光客にとって魅力的なスポットです。
劇場の入口は、当時の風情をそのまま残しており、建物に一歩足を踏み入れると歴史を感じさせる空間が広がっています。
1階には広々とした客席が設けられており、舞台を間近に感じることができます。廻り舞台などの舞台設備も残っており、当時の公演の雰囲気を味わうことができます。
2階には桟敷席があり、伝統的な芝居小屋の形式をそのままに残しています。ここからは、舞台全体を見渡すことができ、ゆったりとした観覧が楽しめます。
劇場内には花道も設置されており、観客との距離が近い臨場感あふれる演出が可能でした。舞台から花道へ役者が進む姿を想像することで、往時の劇場の活気を感じられます。
劇場の目玉である廻り舞台は、劇のシーンを瞬時に変えるための重要な装置です。現在でもその機構は残っており、劇場の見学の際にはぜひ注目したいポイントです。
奈落とは、舞台の下にある地下の空間で、役者が舞台に出入りするために使用されました。このような仕組みも含め、脇町劇場は当時の劇場設備を忠実に残しており、歴史的価値が高い場所です。
所在地: 〒779-3602 徳島県美馬市脇町大字猪尻字西分140-1
開館時間: 9:00~16:30
休館日: 毎週火曜日及び年末年始(12月27日~1月1日)、特別休館日あり。
入館料: 催し物がない場合、大人200円、小・中学生100円で内部の見学が可能です。催し物がある場合は、別途料金が発生します。
駐車場: 「道の駅藍ランドうだつ」駐車場に普通車39台分のスペースがあり、徒歩約5分で劇場までアクセスできます。
脇町劇場は、JR徳島線穴吹駅から車で約10分、または徳島自動車道脇町ICから車で約10分の場所に位置しています。公共交通機関や車でのアクセスが良好で、訪問しやすい場所にあります。
脇町劇場オデオン座は、徳島県美馬市における文化遺産であり、歴史的価値を持つ劇場です。芝居小屋としての特徴や伝統的な舞台設備が今も残っており、映画『虹をつかむ男』の舞台としても知られています。修復された劇場は、観光スポットとしても人気があり、訪れる価値が十分にあります。