庭園の構成
庭園は、本堂東側に広がる枯池式庭園と、四方を石組で囲んだ築山式枯山水庭園で構成されています。江戸時代後期に改修された庭園は、日本庭園の中でも屈指の豪華な石組造形を誇り、その美しさと迫力は庭園研究家をはじめ、多くの訪問者を魅了しています。
阿波国分寺の歴史
行基による開山
阿波国分寺は、741年に聖武天皇(701-756)が発した国分寺建立の詔に基づき、僧行基(ぎょうき)によって開山されました。国分寺は当初、法相宗の寺院として建立されましたが、815年には空海が修行の際に真言宗へと改宗しました。その後、1573年から1615年にかけての桃山時代に火災によって焼失しましたが、1741年に再建され、曹洞宗の寺院として再興されました。
聖武天皇と光明皇后
この寺には、聖武天皇と光明皇后の位牌が祀られています。阿波国分寺は、四国八十八箇所霊場の第十五番札所でもあり、巡礼者や観光客が全国から訪れる霊場となっています。寺院自体は日本の歴史や宗教文化の重要な遺産として保存されています。
庭園の見どころ
石組の迫力と美しさ
阿波国分寺庭園の最も大きな見どころは、豪快かつ繊細な石組です。この庭園の石組は、「阿波の青石」を使用しており、暗い緑色の光沢が庭園全体に深い印象を与えています。重森三玲(しげもりみれい)は昭和41年(1966年)にこの庭園を実測調査し、その石組の技法を「日本庭園の中でも第一級品」と評価しました。庭園の力強い立石や繊細な配置により、見る者を圧倒する景観が広がっています。
天生橋と亀石組
本堂前には亀石組と呼ばれる石組があり、亀に見立てた石が配置された小島の上に、3本の石橋が架けられています。これらの石橋は、自然石や切石、極薄の切石など、異なる材質を用いており、視覚的なバランスが取られた見事な造形です。中でも、中国の廬山にある龍門を模したとされる天生橋(てんしょうばし)は、板石を組み合わせて構成され、まるで石が曲がったように見える不思議な光景を作り出しています。
枯滝石組と洞窟石組
庭園の南側には、空に突き刺さるような高い立石があり、その周囲には枯滝石組や洞窟石組が配置されています。枯滝石組は、滝を水を使わずに石で表現したもので、洞窟石組は仙人の住む洞窟を象徴しています。これらの石組は、立石と横石を巧みに組み合わせ、ダイナミックで躍動感あふれる空間を生み出しています。
阿波国分寺の伽藍
山門と本堂
阿波国分寺の伽藍には、単層の山門があり、参拝者を迎えます。山門を入ると、右手に手水場、左手に地蔵堂や七重塔礎石、そして鐘楼堂が並びます。正面奥には、本尊である薬師如来が祀られている本堂(瑠璃殿)があり、2015年から2020年末まで耐震補強工事が行われました。
大師堂とその他の堂宇
本堂の手前には大師堂があり、1996年に火災で焼失したものの、2014年に再建されました。また、境内には烏瑟沙摩明王堂や白山大権現・秋葉大権現など、神棚を祀る堂宇が点在しています。特に七重塔礎石は、奈良時代に建てられた七重塔の巨大な基礎石として、当時の規模を物語っています。
アクセス情報
鉄道でのアクセス
阿波国分寺へは、JR四国・徳島線の府中駅から約2.6kmの距離にあります。駅からは徒歩もしくはバスを利用して訪れることができます。
バスでのアクセス
徳島バスの神山線(延命経由)または天の原西線に乗車し、「国分寺前」バス停で下車します。バス停からは徒歩約0.4kmです。
車でのアクセス
車でのアクセスは、国道192号を利用し、「矢野」から約0.4kmの距離です。また、高速道路を利用する場合、徳島自動車道の藍住ICから約7.9km、高松自動車道の板野ICからもアクセス可能です。
拝観情報
庭園の拝観は、納経所に声をかければ見学が可能です。拝観時間は午前9時から午後4時半までで、拝観料は300円です。