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日照山 極楽寺

(にっしょうざん ごくらくじ)

四国八十八箇所霊場 第二番札所

極楽寺は、徳島県鳴門市に位置し、高野山真言宗に属する寺院です。正式には日照山 無量寿院(むりょうじゅいん)と号し、その本尊は阿弥陀如来です。四国八十八箇所霊場の第二番札所として、多くの巡礼者が訪れるこの寺院は、阿波西国三十三観音霊場(東部)の第21番札所、阿波北嶺薬師霊場の第11番札所でもあります。また、日本遺産にも第15番として登録されており、その歴史的・文化的価値は非常に高いとされています。

極楽寺の歴史

創建と空海との関わり

極楽寺の創建は奈良時代にまで遡ります。寺伝によれば、この寺は行基によって開かれたとされています。弘仁6年(815年)、弘法大師で知られる空海がこの地で21日間にわたる修法を行い、阿弥陀経を読誦した際に、満願の日に阿弥陀如来の姿を感得しました。この経験から、空海は阿弥陀如来の姿を刻み、本尊としました。

日照山の由来

阿弥陀如来の後光が遠く鳴門まで達し、漁民たちは光によって魚が捕れなくなってしまいました。困った漁民たちは、本堂の前に山を築き、光を遮ることで漁ができるようになったという伝承から、極楽寺は「日照山」と号するようになりました。

安産祈願の寺としての信仰

また、空海が阿弥陀経を読誦していた際、難産だった難波の女性が彼の加持によって無事に安産を成し遂げました。彼女はそのお礼として、木造大師像を寄進しました。この像が大師堂の本尊です。さらに、明治時代には大阪住吉の女性が安産祈願を行い、無事に男児を出産しました。そのお礼に寄進された修行大師像が、大師堂の前に立っています。

これらの出来事から、極楽寺は「子授け・安産の寺」として広く信仰され、安産祈願やお守りの授与も行われています。

極楽寺の焼失と再建

極楽寺は天正10年(1582年)に長宗我部元親の兵火により焼失しました。しかし、万治2年(1659年)、徳島藩主であった蜂須賀光隆によって再建されました。現在の本堂や大師堂は、その際に再建されたものです。

境内の見どころ

山門(仁王門)

極楽寺の境内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、立派な山門、仁王門です。これは入母屋造の楼門で、両脇に金剛力士(仁王)像が安置されています。参拝者を厳かに迎えるこの門は、寺院の歴史と威厳を感じさせます。

本堂

極楽寺の本堂は江戸時代初期の万治2年(1659年)に建立されました。本尊の阿弥陀如来は、本堂裏の斜面を削って造られた収納庫に安置されており、堂内には前仏が安置されています。右脇陣には阿弥陀如来坐像、左脇陣には薬師如来が安置されており、堂内には極楽と地獄の世界を描いた「地獄極楽図」が展示されています。これにより、参拝者は仏教の教えに触れ、深い悟りを得ることができます。

大師堂

万治2年(1659年)に建立された大師堂は、「安産大師」として信仰されており、特に安産祈願をする参拝者が多く訪れます。堂内は、静かで心安らぐ空間が広がり、参拝者は平穏な時間を過ごすことができます。

観音堂

江戸時代中期に建立された観音堂は、本尊として千手観音像が祀られています。阿波西国三十三観音霊場の札所としても知られ、観音信仰を通じて多くの巡礼者が訪れます。

薬師堂

江戸時代末期に建立された薬師堂は、本尊として薬師如来立像が祀られています。この堂は阿波北嶺薬師霊場の札所として、病気平癒や健康祈願のために多くの人々が訪れています。

特色ある見どころ

抱き地蔵(おもかるさん)

「抱き地蔵」は、通称「おもかるさん」と呼ばれ、その特徴は軽く感じると願いが叶うという信仰にあります。多くの参拝者が願いを込めてこの地蔵に触れ、祈りを捧げています。

千体水子地蔵

千体水子地蔵は、水子供養のために設置された地蔵群です。江戸時代初期以前、この場所には本堂があったと伝えられています。現在も、多くの人々が水子供養のために参拝し、その霊を慰めています。

長命杉

極楽寺の境内には、樹齢約1,200年の「長命杉」がそびえています。この杉は、弘法大師空海が手植えしたと伝えられ、鳴門市の天然記念物に指定されています。その荘厳な姿は、長い歴史と共に寺院の象徴として多くの人々に親しまれています。

招福弁財天

極楽寺の境内には「招福弁財天」と呼ばれる小さな祠があります。弁財天は、財運や芸術の神として信仰され、多くの参拝者が財運向上や芸術の成功を祈願しています。

雲海の浄土

極楽寺の中央には、静寂に包まれた日本庭園「雲海の浄土」が広がっています。庭園の美しい景観は、まさに極楽浄土を彷彿とさせ、参拝者はここで心の安らぎを感じることができます。

境内の石造仏と文化財

本尊同体の阿弥陀如来

境内には、本尊である阿弥陀如来を模した等身大の石造仏が点在しており、これらを巡ることで心の浄化を図ることができます。この石造仏には、釈迦如来や仏足石、子授け大師、願掛け地蔵などもあり、それぞれが異なる願いを持つ参拝者に力を与えています。

鐘楼堂

極楽寺の鐘楼堂は、参拝者が厳かに鐘を鳴らし、心を清める場として利用されています。この鐘の音は、境内全体に響き渡り、心身を浄化する効果があります。

句碑

極楽寺には、多くの句碑が立ち並んでいます。その中でも特に有名なのが、滝佳杖の「弥陀の掌にすがりて発ちし蝶の昼」という句です。この句碑は、仁王門を入って右手にあり、訪れる人々に詩情豊かな時間を提供しています。

石柱門

石柱門は、遍路道の境外に位置し、1922年(大正11年)に大阪の講によって寄進されました。この門をくぐると、極楽寺の荘厳な雰囲気が一層感じられます。

納経所と参拝者への対応

極楽寺には、納経所が二か所あります。駐車場側の納経所(売店併設)は個人参拝者向け、本坊側の納経所は団体参拝者向けに開かれていましたが、コロナ禍の影響で参拝者が減少したため、駐車場側の納経所と売店は休業しています。現在では、本坊側の納経所で個人参拝者も受け付けています。

宿坊

極楽寺には宿坊も併設されており、定員は150名です。事前予約が必要ですが、宿坊に泊まることで静かな時間を過ごし、心身のリフレッシュができます。四国八十八箇所を巡礼する方々にとって、極楽寺は大切な中継点となっています。

文化財

重要文化財

極楽寺の本尊である木造阿弥陀如来坐像は、秘仏として大切にされています。この像は鎌倉時代に作られたもので、1911年(明治44年)に国の重要文化財に指定されました。漆箔の施された古色の像で、像高は84センチメートルです。

徳島県指定有形文化財

極楽寺には、絹本著色両界曼陀羅図が所蔵されています。この曼荼羅図は縦157センチメートル、横107センチメートルの大きさで、1973年(昭和48年)に徳島県の指定有形文化財となりました。

鳴門市指定天然記念物

極楽寺境内の「長命杉」は幹周4.65メートル、樹高15メートルの巨大な杉で、1967年(昭和42年)に鳴門市指定の天然記念物に指定されました。

交通アクセス

鉄道

極楽寺へは、四国旅客鉄道(JR四国)高徳線の阿波川端駅(1.1キロメートル)または板東駅(1.5キロメートル)から徒歩でアクセスできます。

バス

徳島バス鳴門大麻線の「二番札所前」バス停から徒歩0.1キロメートルです。

道路

一般道では、徳島県道12号鳴門池田線が極楽寺前を通っています。車で訪れる場合は、高松自動車道の板野ICから2.3キロメートル、または徳島自動車道の藍住ICから5.1キロメートルの距離にあります。

周辺の札所

四国八十八箇所霊場では、極楽寺の前後に霊山寺(1.4キロメートル)と金泉寺(2.6キロメートル)が位置しています。

まとめ

極楽寺は、徳島県鳴門市に位置する歴史ある寺院であり、多くの参拝者が訪れる霊場です。四国八十八箇所霊場の第二番札所として、信仰と歴史が息づくこの場所は、巡礼者のみならず観光客にとっても見どころが多く、心安らぐ場所です。ぜひ一度訪れて、歴史と自然が織りなす静寂な空間を体感してみてください。

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名称
日照山 極楽寺
(にっしょうざん ごくらくじ)

鳴門・徳島市周辺

徳島県