概要
慈眼寺の所在地は標高150メートル付近の上勝町正木の集落です。そこから山道を登り、標高320メートル付近にある車道脇からは、寺の近くにある美しい「灌頂滝」を臨むことができます。さらに山を登ると、標高550メートル付近に本坊や駐車場があり、ここから徒歩約20分で標高700メートル付近の石灰岩質の山腹にある本堂と「穴禅定」と呼ばれる鍾乳洞が待っています。
空海と鍾乳洞
この寺は、平安時代初期の延暦年間(782年 – 805年)に、四国を巡錫していた空海(弘法大師)が発見した不思議な鍾乳洞に由来します。寺伝によると、空海が洞窟で加持祈祷を行った際、邪気を放つ悪龍が洞窟から現れ、空海を襲おうとしました。しかし、空海は法力で悪龍を封じ、洞窟の前に十一面観音を刻み祀る堂宇を建立しました。これが慈眼寺の開創とされています。
境内の見どころ
大師堂
本坊に位置する大師堂では、弘法大師像を拝顔することができます。ここは、四国霊場巡礼者たちにとって特別な参拝スポットです。
護摩堂
護摩堂では、不動明王像を拝顔しながら参拝することができます。また、本坊の納経所には、2019年冬より暖炉が設置され、訪問者に温かみのある空間が提供されています。
蔵王権現堂
2015年に新築された蔵王権現堂には、蔵王権現が本尊として祀られ、両脇には不動明王と毘沙門天が鎮座しています。ここでは、双羽権現と蔵王権現を共に参拝することができ、御影には両権現が描かれています。寺院の歴史に関連する深い由緒は不明ですが、信仰の対象として多くの参拝者を惹きつけています。
本堂
本坊から山道を徒歩で約20分登ると、本堂が姿を現します。参拝者は線香に火を灯し、本堂の周りを3周しながら祈願するのが習わしです。この場所は、静寂と自然が織りなす神秘的な空間で、多くの人々が心の安らぎを求めて訪れます。
穴禅定
本堂からさらに上部に位置する「穴禅定」は、鍾乳洞として有名です。洞窟内の最も奥には弘法大師の石像が安置されており、修行者たちは白衣と藁草履を身にまとい、寺の案内人(先達)の指示に従ってロウソク1本で洞窟内を進みます。この洞窟の距離は約100メートルですが、内部は狭く、体格の大きい方や閉所恐怖症の方には難しい場所です。修行は約2時間かかり、入洞は3月1日から11月30日までの期間限定です。また、8月13日から15日、および悪天候時には入洞できません。
文化財
指定文化財
慈眼寺には、上勝町指定の有形文化財および天然記念物があります。特に重要なのは、寺院の本尊である「十一面観音菩薩立像」(像高70センチメートル)で、1976年に指定を受けました。また、「穴禅定」自体も上勝町指定の天然記念物として保護されています。この鍾乳洞は、慈眼寺の象徴的な存在として知られ、歴史と自然が交差する神聖な場所です。
灌頂ヶ滝
「灌頂ヶ滝(かんじょうがたき)」は、慈眼寺の参拝者が必ず目にする美しい滝です。「御来仰の滝」とも呼ばれ、落差約70メートルの直瀑は、訪れる人々に圧倒的な自然の力を感じさせます。滝のすぐ近くには、竜神を祀る岩の祠があり、そこから見上げると、不動明王を安置した小さな祠が左上方に見えます。この滝は四季折々の姿を見せ、寺院へ向かう途中の立ち寄りスポットとして人気です。
雄淵・雌淵
灌頂ヶ滝の下方には、関ケ谷川にある「雄淵(おんぶち)」と「雌淵(めんぶち)」があります。ここは、寺院周辺の自然美を堪能できる静かな場所で、淵神の塔がそびえるカーブから入り込むことで、参拝者たちは更なる自然との一体感を感じることができます。
アクセス情報
慈眼寺へのアクセスは、JR「徳島駅」から車で約60分です。上勝町の自然豊かな景観を楽しみながら、四国八十八箇所巡礼の一環として訪れるのに最適な場所となっています。
周辺情報
慈眼寺を訪れる際には、周辺の観光スポットも見逃せません。特に「鶴林寺」や「太龍寺」など、四国八十八箇所の札所も近くに位置しており、これらの寺院を巡ることでさらなる霊場巡礼の旅を楽しむことができます。また、四国別格二十霊場の札所としても、周辺には多くの霊場が点在しているため、スピリチュアルな体験を求める人々にとって魅力的な地域です。
慈眼寺は、自然と歴史、信仰が融合する神聖な場所です。参拝者はその荘厳な雰囲気と、空海の伝承に触れながら、心の安らぎと修行の意味を見出すことができるでしょう。