焼山寺山とその道
焼山寺山の概要
焼山寺山の標高は938メートルで、その中腹(標高約705メートル)に焼山寺の境内があります。この寺は四国八十八箇所で三番目に高い位置にあります。焼山寺山は四国山地の山深いところに位置し、四国遍路においても屈指の難所として知られています。
阿波霊場三難所
焼山寺は、阿波霊場三難所の一つとしても知られ、「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」と称される難所です。藤井寺からの遍路道「焼山寺道」を進むと、長戸庵、柳水庵、浄蓮庵を経て焼山寺に到達します。その後は「一宮道」と呼ばれる道に続き、杖杉庵へと向かいます。
歴史
寺の由来
寺伝によると、焼山寺は大宝年間(701年 - 704年)に役小角(役行者)によって開山され、蔵王権現を祀る庵が建てられたとされています。後に弘法大師(空海)がこの地を訪れ、神通力を持つ大蛇が村を襲っていることを知り、これを退治しようとしました。大蛇は山に火を放って抵抗しましたが、弘法大師は虚空蔵菩薩に祈願し、大蛇を岩窟に封じ込めました。そのお礼として虚空蔵菩薩を彫り、本尊として一寺を建立しました。この故事にちなんで山号や寺号が名付けられています。
徳島藩主との関わり
足利尊氏は焼山寺を祈願所とし、江戸時代には徳島藩主の蜂須賀家から篤く帰依されました。
宗派:高野山真言宗
ご本尊:虚空蔵菩薩
四国八十八箇所霊場:第十二番札所
納経とご詠歌
本尊真言:のうぼう あきゃしゃ きゃらばや おんあり きゃまり ぼり そわか
ご詠歌:後の世を思へば恭敬焼山寺 死出や三途の難所ありとも
納経印:当寺本尊、奥之院-蔵王権現、柳水庵-弘法大師、浄蓮庵-阿弥陀如来、杖杉庵-右衛門三郎
納経時間:午前8時 - 午後4時30分
境内の紹介
境内の主要な施設
焼山寺の境内は、参道から本堂、そして多くの社や堂を含んでいます。大駐車場から山門までの約500メートルの参道には、布袋尊や鬼子母神、十三仏の石像が並びます。
主な建物
- 山門(仁王門)
- 本堂:本尊の虚空蔵菩薩を祀る本堂で、参拝者は前立本尊を拝することができます。
- 大師堂:弘法大師像が祀られ、前立大師像が拝観できます。
- 三面大黒天堂:秘仏である三面大黒天が安置され、通常は前立三面大黒天が拝観可能です。
- 十二社神社:熊野十二社権現を祀っていたとされ、明治以降は十二神を祀っています。
- 多宝塔:大日如来を祀る石造の塔です。
- 鐘楼:境内の鐘楼で、その音が山中に響きます。
納経所と参拝施設
納経所は山門の左側に位置し、右手には参拝者の休憩所および展示場があります。また、本尊と弘法大師像は本堂裏の収蔵庫に安置されています。
行事と文化財
主な行事
焼山寺では毎年8月30日に「おこもり法要」が行われ、日没後には境内に灯籠が多数灯されます。
文化財
焼山寺には多くの文化財があり、その中でも特に注目されるのは国の史跡に指定された阿波遍路道や、徳島県や神山町が指定する文化財です。
国の史跡
- 阿波遍路道 焼山寺道:藤井寺から焼山寺へ向かう遍路道の一部が指定されています。
- 阿波遍路道 一宮道:焼山寺から一宮寺へ向かう道で、焼山寺境内を出てからの区間が指定されています。
県指定文化財
- 弘法大師坐像:寄木内刳造りの坐像で、昭和48年に徳島県の有形文化財に指定されています。
- 梵鐘:1649年に作られた銅鐘で、昭和59年に指定されました。
交通案内
焼山寺へのアクセス方法は鉄道、バス、そして車によるものがあります。
鉄道
最寄り駅はJR四国の徳島線「鴨島駅」で、そこから焼山寺までは約15.7キロメートルです。
バス
徳島駅から徳島バスの神山線または佐那河内線に乗り、「神山高校前」バス停で下車し、そこから焼山寺まで向かいます。
車
車でのアクセスは、徳島県道43号神山川島線を利用することができます。また、遍路道を徒歩で巡る場合、藤井寺から焼山寺へと続く道があり、約12.9キロメートルの距離となっています。
奥の院と周辺霊場
奥の院
焼山寺の奥の院である蔵王権現堂は、本坊左奥から約1.1キロメートルの登山道を登った場所に位置し、山頂には蔵王権現が祀られています。登山道の途中には「大蛇封じ込めの岩」があり、神秘的な雰囲気を感じることができます。
周辺の霊場
杖杉庵は、右衛門三郎の終焉の地とされており、焼山寺から訪れることができます。また、周辺には長戸庵、柳水庵、浄蓮庵といった札所も点在しています。
周辺の観光地
- 神山温泉:神山町にある温泉地で、遍路の疲れを癒すのに最適です。
- 剣山:四国第二の高峰で、自然愛好家に人気の登山スポットです。