常楽寺の歴史
寺伝によると、弘法大師(空海)がこの地で修行していた際、弥勒菩薩が多くの菩薩を連れた姿を感得したといわれています。その後、弘法大師は霊木に弥勒菩薩を彫り、堂宇を建立して本尊として安置しました。また、弘法大師の甥である真然僧正が金堂を建立し、祈親上人が講堂や三重塔などを建設して、常楽寺は七堂伽藍を誇る大寺院として繁栄しました。
室町時代には、阿波細川氏初代頼春の勅願所として寺領に延命村が寄進され、寺勢はますます盛んになりました。しかし、天正年間(1573年 - 1592年)には長宗我部元親の兵火により焼失しました。万治2年(1659年)には徳島藩主蜂須賀光隆の手によって再興されましたが、その後も変遷が続き、文化12年(1815年)には灌漑用ため池のために元の場所から移転が行われました。現在の常楽寺は、谷間から尾根上へと移され、約5千平方メートルの土地が造成されました。
本尊真言:おん まいたれいや そわか
ご詠歌:常楽の岸にはいつか到(いた)らまし 弘誓(ぐぜい)の船に乗りおくれずば
納経:当寺本尊、奥之院慈眼寺
常楽寺の境内
本堂
常楽寺の本堂には、本尊である弥勒菩薩坐像が安置されており、両脇には不動明王立像と毘沙門天立像が祀られています。これらの像は同じ厨子に納められており、厳かな雰囲気を醸し出しています。
大師堂
大師堂には、弘法大師の像が祀られており、参拝者はここで弘法大師に祈りを捧げることができます。
その他の施設
境内には、薬師堂や地蔵堂、鐘楼が点在しており、それぞれの建物が訪れる人々に静かな祈りの空間を提供しています。また、あららぎ大師と呼ばれるイチイの巨木の枝の間には弘法大師像が祀られています。この巨木は、訪れる者に自然の力強さと神秘を感じさせます。
流水岩の庭園
常楽寺の境内は、流水岩と呼ばれる自然の岩盤の上に広がっており、断層が剥き出しになった独特の地形が特徴です。この地形は参拝者が歩くことで徐々に浸食され、険しかった地形が少しずつ緩やかになったとされています。庭園は岩の形状を活かした造りになっており、自然と調和した美しい景観が広がっています。
常楽寺の文化財
国の史跡
阿波遍路道の一部である常楽寺境内は、2021年3月26日に国の史跡として指定されました。これは、四国遍路の歴史と文化を後世に伝える重要な遺産として評価されたものです。
国の登録有形文化財
常楽寺の本堂と大師堂は、2011年7月25日に国の登録有形文化財として登録されました。これらの建造物は、歴史的価値と建築的価値が高く、保存と保護が図られています。
市指定文化財
常楽寺には、絹本着色による「降三世明王像」や「薬師三尊十二神将像」が所蔵されており、これらは2001年12月26日に市の指定文化財として指定されています。これらの仏画は、美術的価値が高く、寺院の歴史と深く結びついています。
交通案内
鉄道
常楽寺へは、四国旅客鉄道(JR四国)徳島線の府中駅から3.2キロメートルの距離にあります。駅から徒歩やタクシーでのアクセスが可能です。
バス
徳島バスの神山線(延命経由)や天の原西線を利用し、「常楽寺前」バス停で下車すると、約0.3キロメートルの距離で寺院に到着します。バスの便も比較的よく、公共交通機関を利用しての参拝が便利です。
道路
常楽寺へは一般道として国道192号線が最寄りで、延命から約0.3キロメートルです。また、高速道路を利用する場合は、徳島自動車道の藍住インターチェンジから約8.7キロメートル、高松自動車道の板野インターチェンジから約11.8キロメートルの距離にあります。車でのアクセスも良好で、駐車場は20台分の無料スペースが用意されています。
奥の院 慈眼寺
常楽寺の奥の院である慈眼寺は、寺領内に位置し、本尊として十一面観音が祀られています。また、杉の木に彫られた生木地蔵尊の堂もあり、参拝者にとって特別な場所となっています。奥の院へは、延命山の裏手から約20分ほどで到達でき、静かな山中の道を歩きながら、深い信仰の世界に触れることができます。