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霊鷲山 鶴林寺

(りょうじゅさん かくりんじ)

鶴林寺は、徳島県勝浦郡勝浦町にある高野山真言宗の寺院で、四国八十八箇所霊場の第二十番札所として知られています。山号は霊鷲山、院号は宝珠院(ほうじゅいん)といい、寺の本尊は地蔵菩薩です。地域の人々や遍路からは親しみを込めて「お鶴さん」と呼ばれています。歴史ある鶴林寺は、巡礼者や観光客にとって、精神的な癒しの場としても人気を集めています。

寺の概要

鶴林寺は「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」と称される阿波の難所の一つであり、標高516.1メートルの鶴林寺山の山頂近くに位置しています。本堂は標高495メートル付近にあり、四国八十八箇所の中でも7番目の高さを誇ります。表参道は「へんろころがし」とも呼ばれる急な山道で、遍路にとって難所の一つとされています。

本尊真言

「おん かかかびさんまえい そわか」

ご詠歌

しげりつる 鶴の林をしるべにて 大師ぞいます地蔵帝釈

歴史

寺伝によれば、鶴林寺は延暦17年(798年)、桓武天皇の勅願によって弘法大師(空海)によって開創されました。空海がこの山で修行中、雌雄の白鶴が金の地蔵菩薩像を守護しているのを見て、霊木に地蔵菩薩を刻んで本尊としました。鶴林寺の名もここから由来しています。

その後、平城天皇や嵯峨天皇、源頼朝、源義経などの歴史的な人物から篤い信仰を受け、徳島藩主蜂須賀家政によっても保護されました。本尊には、猟師が誤って放った矢が地蔵菩薩の胸に刺さったという「矢負いの地蔵」の伝承があり、本尊の傷が今も残っているとされています。

境内の主な見どころ

山門(仁王門)

明治42年に建立された山門は、仁王像と共に、一対の鶴像が配置されています。この門をくぐると、荘厳な雰囲気が漂い、訪れる人々を迎えます。

六角地蔵堂

文久22年に建立された六角地蔵堂には、御砂地蔵6体が祀られています。この地蔵堂は、六角形の形状が特徴であり、参拝者が静かに祈りを捧げる場所となっています。

忠霊殿

昭和23年に建立された忠霊殿は、戦没者の霊を慰めるための建物です。歴史の中で命を捧げた人々に感謝の意を示すため、訪れる人々はこの場所で黙祷を捧げることができます。

護摩堂と大師堂

護摩堂は大正15年に、大師堂は大正2年にそれぞれ建立されました。護摩堂では護摩供養が行われ、大師堂には弘法大師が祀られています。訪れる巡礼者にとって、これらの建物は精神的な支えとなる重要な場所です。

本堂

慶長9年に建立された本堂は、鶴林寺の中心となる建物です。御本尊である地蔵菩薩が安置され、多くの参拝者が訪れる場となっています。本堂の裏手には、弘法大師が開創したとされる「御本尊降臨之杉」がそびえ立ち、その神秘的な雰囲気が漂います。

三重塔

文政6年(1823年)に建立された高さ23メートルの三重塔は、五智如来(寶生・阿閦・大日・無量壽・不空成就)が祀られています。この塔は鶴林寺の象徴的な存在であり、その壮麗な姿は訪れる人々の目を引きます。

鎮守堂と聖天堂

承応2年に建立された鎮守堂では、鶴峯大権現が祀られています。また、宝暦8年に建立された聖天堂は境内の最高所に位置し、役の行者像が祀られています。静寂に包まれたこの場所は、山頂からの美しい景色を楽しむことができます。

鐘楼

宝暦9年に建立された鐘楼は、山門を入って右手に上がって行く場所にあります。昭和24年に製作された135貫の鐘が吊るされていますが、普段は閉じられており、一般の参拝者が鐘を撞くことはできません。

その他の建物と施設

大本坊と修行道場

明治28年に建立された大本坊は、鶴林寺の中核をなす施設の一つです。また、昭和45年に建立された修行道場は120畳の広さを誇り、修行や法要の際に利用される場所です。

霊宝殿と宝庫

鶴林寺の宝物を収蔵する霊宝殿は昭和36年に、宝庫は延享5年4月にそれぞれ建立されました。ここには、歴史的な価値を持つ品々が保存されています。

句碑

鶴林寺の仁王門の右前には、瀧佳杖の句碑が建っています。句は「水煙にまほろしの鶴古ふし咲き」と刻まれており、参拝者に詩的な情緒を感じさせます。

文化財

重要文化財

鶴林寺には、いくつかの重要文化財が保存されています。その中でも、平安時代後期に作られた「木造地蔵菩薩立像」は、寄木造の彩色で、像高63.3センチメートルです。この像は現在、京都国立博物館に寄託されており、明治44年に重要文化財に指定されました。

国の史跡

鶴林寺道は、国の史跡に指定されています。水呑大師から鶴林寺までの約1.27キロメートルの道は、阿波遍路道として知られ、平成22年に指定されました。また、鶴林寺から太龍寺へ続く道の前半部分も同じく指定されており、この道を歩く遍路道は、四国霊場の中でも特に美しい景観を誇ります。

徳島県指定有形文化財

絹本著色地蔵来迎図は、昭和43年に徳島県の有形文化財に指定されました。また、鶴林寺にある三重塔は文政10年(1827年)に建立され、昭和27年に同じく指定されました。これらの文化財は、鶴林寺の歴史的価値を証明するものです。

勝浦町指定有形文化財

鶴林寺の本堂は、昭和53年に勝浦町の有形文化財に指定されました。また、千仏名経3巻も同じく指定されています。これらの文化財は、地域にとっても大変重要なものとして大切に保存されています。

重要美術品(国認定)

絹本著色釈迦三尊像は、昭和15年に国の重要美術品として認定されました。この作品もまた、京都国立博物館に寄託されており、その美しさと歴史的価値は高く評価されています。

施設情報

宿坊と駐車場

鶴林寺には宿坊はありませんが、参拝者のために無料の駐車場が完備されています。普通車で約30台駐車可能なスペースがあり、車でのアクセスが便利です。

アクセス情報

鉄道

四国旅客鉄道(JR四国)の牟岐線立江駅から約13.5キロメートルの距離にあります。

バス

徳島バス勝浦線(横瀬行)「生名」バス停から約3.4キロメートルの距離です。

道路

徳島県道19号阿南鷲敷日和佐線や県道283号和食勝浦線を通り、鶴峠を越えると鶴林寺に到達します。

周辺施設

水呑大師

鶴林寺の1.27キロメートル手前に位置し、弘法大師が杖を突いたところから水が湧き出たという伝説が残る場所です。

茅葺き遍路小屋

鶴林寺道を歩く遍路の休憩所として利用されており、茅葺きの小屋が設けられています。

前後の札所

鶴林寺は四国八十八箇所の第20番札所に位置し、19番札所の立江寺から13.1キロメートル、21番札所の太龍寺からは6.7キロメートルの距離にあります。

終わりに

鶴林寺は歴史的な背景や伝承が豊かな寺院であり、巡礼者や観光客にとっても魅力的なスポットです。徳島県の豊かな自然と共に、古くから信仰を集めてきたこの地を訪れることで、日本の文化や精神を感じることができるでしょう。

Information

名称
霊鷲山 鶴林寺
(りょうじゅさん かくりんじ)

鳴門・徳島市周辺

徳島県