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東林院(種蒔大師)

(とうりんいん たねまき だいし)

東林院は、徳島県鳴門市大麻町大谷に位置する高野山真言宗の寺院です。正式には「八葉山 神宮寺 東林院」と称され、本尊として薬師如来と愛染明王が祀られています。四国八十八箇所霊場の第一番札所奥の院として、新四国曼荼羅霊場の第一番札所、そして阿波北嶺薬師霊場第十六番札所にも指定されています。この寺院は「種蒔弘法大師」や「種蒔大師」として広く知られています。

東林院の歴史

創建と伝承

東林院は、奈良時代の天平5年(733年)に行基によって創建されたと伝えられています。かつては阿波国の「八門首」(阿波八本寺)の一つに数えられ、薬王寺、太龍寺、鶴林寺などと並び、末寺16か寺を有する大寺院でした。

空海の足跡と「種蒔弘法大師」

平安時代前期の大同3年から4年(808年 - 809年)に、弘法大師空海が当地を訪れ、真言宗の教えを住民に伝えただけでなく、農業の発展を奨励しました。伝承によると、空海自らが鍬を手にし、米や麦の種を蒔き、災害の調伏も行ったとされています。これにより、東林院は「種蒔弘法大師」として広く崇められるようになりました。

江戸時代の大火とその後の再建

江戸時代前期、元禄13年(1700年)頃に大火に見舞われ、伽藍の大半が焼失しました。その後、寺院は大幅に縮小しましたが、今日に至るまで地元の人々の信仰を集め続けています。

大谷焼との関わり

東林院には、大谷焼の陶祖として知られる文右衛門の墓があり、窯業関係者の間で大切にされています。後に、大谷焼研究家の調査により、この墓が文右衛門ではなく萬七のものであることが判明しましたが、萬七と文右衛門が同一人物であるかどうかは不明です。毎年11月の第2土曜日・日曜日には、東林院の境内で「大谷焼 窯まつり」が開催され、多くの観光客で賑わいます。

御詠歌

種蒔きし 稲穂みのりて 栄えゆく 大師の恵み 仰げもろびと

境内の見どころ

本堂

東林院の本堂には、本尊である薬師如来が安置されています。四国八十八箇所霊場の札所本尊として、多くの参拝者が訪れます。

大師堂

大師堂には、弘法大師像が祀られており、「種蒔大師」として信仰の中心となっています。本堂よりもひと回り大きなこの建物は、参拝者の信仰の要です。大師像は別棟の収蔵庫に安置されています。

原爆の火

東林院には、1990年に霊山寺で灯された「原爆の火」が、2012年8月6日より引き継がれています。この火は平和の象徴として、訪れる人々の心に深い祈りを捧げさせます。

穴観音古墳

境内には、古代の遺跡である「穴観音古墳」が存在します。歴史的な遺物として、多くの歴史愛好家が訪れる場所です。

鐘楼堂

境内に位置する鐘楼堂もまた、参拝者の注目を集める建物の一つです。大きな鐘があり、心静かに祈りを捧げることができます。

文化財

重要文化財:木造弥勒菩薩坐像

東林院には、平安時代後期に作られた「木造弥勒菩薩坐像」が安置されています。この像は、檜の寄木造りで、高さ96センチメートルという大きさです。平成14年6月26日に重要文化財として指定され、歴史的価値が認められています。

徳島県指定有形文化財:絹本著色阿弥陀尊来迎図

さらに、昭和34年9月11日に徳島県指定有形文化財に指定された「絹本著色阿弥陀尊来迎図」も所蔵しています。この貴重な絵画は、仏教美術の重要な遺産として保存されています。

アクセスと周辺観光

東林院は、県道12号線から宇志比古神社の参道を進んだ場所に位置しており、アクセスも良好です。無料の駐車場が完備されており、参拝者にとっても訪れやすい環境です。

周辺の札所

東林院は、四国八十八箇所霊場の第一番札所奥の院として知られています。周辺には、霊山寺(第一番札所)や極楽寺(第二番札所)などの歴史的な寺院も点在しており、霊場巡りを楽しむ観光客にも人気です。

前後の札所

四国八十八箇所霊場:1番 奥の院 東林院 -- 4.0 km -- 1番 霊山寺 -- 1.2 km -- 2番 極楽寺
新四国曼荼羅霊場:88番 黒瀧寺 -- 1番 東林院 -- 2番 長谷寺

まとめ

東林院は、長い歴史を持つ寺院として、多くの参拝者や観光客に愛されています。空海の農業振興や「種蒔弘法大師」としての信仰、さらに文化財としての重要な遺産が数多く残されており、地域に根ざした深い歴史と伝統を感じさせます。徳島県鳴門市を訪れる際には、ぜひ東林院の静寂な雰囲気と歴史的な価値を体感してみてください。

Information

名称
東林院(種蒔大師)
(とうりんいん たねまき だいし)

鳴門・徳島市周辺

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